Case5:9025 鴻池運輸株式会社

1.概要

祖業は運輸業であるが、顧客からの運搬請負により発展。顧客工場構内での工程請負、プラント設備機器の据付等の業務請負など多角的な展開を進める。
時価総額 1337億円(7月6日時点)
営む事業の概要は以下のとおり。

●総合ソリューション事業1

素材産業分野鉄鋼、非鉄・金属、ガス、化学メーカー等
消費産業分野食品・飲料、日用品メーカー等
航空産業分野航空会社等
医療産業分野医療機関、医療機器メーカー等
生産工程領域資材・原料の受入
製造請負
工場構内運搬
製品検査
流通工程領域工場、配送センターにおける製品入出庫、配送等
顧客及び当社物流センターにおける製品商品の流通加工
その他専門工程等医療機器の減菌消毒、病院内での医療機器洗浄並びに輸送
産業廃棄物の収集運搬
製鉄所における再資源化原料のリサイクル
工場プラント設備の設計・施工・設備保全

●国内物流事業

定温物流業務食品製造業(飲料・食品・食品原料の製造メーカー)
一般物流業務機械・機器製造業、衣料品取扱業、小売業(量販店)等
定温物流業務冷凍・冷蔵倉庫の運営
冷凍食品・冷蔵食品等の定温管理下でのトラック運送
一般物流業務物流倉庫運営
トラック輸送

●国際物流事業

商社、メーカー等フォワーディング業務(国際間輸送に関して、航空・海運・港湾・陸上輸送と当社グループ国内物流事業を含めた国際複合一貫輸送サービスのアレンジ・提供並びに貿易事務の受託)
港湾倉庫の運営
海外における常温物流業務・一般物流業務
海外への顧客プラントの輸送並びに施工

2.不適切事案2

●不適切事例公表のスケジュール
2024年2月9日「当社従業員による不正行為の発覚および2024 年3 月期第3 四半期決算発表の延期と当該四半期報告書の提出期限の延長申請検討について」
2024年3月14日「内部統制調査委員会の中間報告書受領に関するお知らせ」2024年4月19日「内部統制調査委員会の最終調査報告書受領および再発防止策の取り組みに関するお知らせ」

●不適切事例
2023年11月 税務調査で、D支店従業員、取引業者と共謀し、架空の外注費等の計上
2023年12月22日 内部統制調査委員会設置、架空請求、・横領の事実が確認
2024年2月9日 外部弁護士招聘、内部調査委員会の組織体制を改変

●調査で判明した事実
事例1)架空請求
D社D1課課長A1、部下A2通謀、B1社等7社と協力、架空業務発注
請求書を発行させ、資金を社外流出、現金のキックバックにより私的に着服

事例2)不正な貯蔵品の消込
過大な貯蔵品を週越していないにもかかわらず消込

事例3)不正な原価の付替
本来の発注部署と異なる部署で、また、人員の応援を受けていない部署で部門間付替

事例4)不正な先行支払
物品納入を先送りしながら、先行して対価支払、費消として処理

事例5)不正な差額支払
取引業者から出向を受け入れた際に給与相当額と合意した金額との差額を別名目で支払

事例6)不正な派遣費用の水増し
取引業者に対して水増しした派遣費用の支払

3.不適切事案公表前後の株価及び取引高3
株価推移を確認すると、発表後大きく株価が下落している。
しかし、第三者委員会の中間報告の内容が明らかになると強い買いとともに、株価が急回復している。

4.内部統制の観点から
本件の特徴は、予算を強く意識している点、申請者と承認者の共謀による内部統制の無効化、及び取引先業者への優越的地位が主な動機として述べられている。

5.再発防止策のうち、重要と思われたものを抽出
●人事の流動化と適正配置
●取引業者との適正な取引関係の保持
●企業風土の刷新

6.コメント

不正のトライアングルで整理する。

1.機会

内部統制の申請者となる部下と自身のポジションが長期間固定されており、自身が不正を働く際に、部下を巻き込むことが出来た。また、出入りの取引業者に対して、優越的な地位を継続して有していた。

2.動機

実績が予算を大きく上回ると翌期の予算が、上回って設定されるのを回避する。

3.正当化

部門の閉鎖が決まっており、取引業者に過去の協力等に報いるため追加での報酬を支払うために実施する。

1点不思議なのは、翌期以降部門閉鎖が決まっているのに、翌期以降の予算を気にしている点である。実際は、閉鎖が決まっていることを踏まえ、自身の不正行為が実施されており、また、他部署に移動した場合でも、当該不正行為が継続可能となるように、自部門への注意を集めないようにするためであったのではないかとの推測もなされる。
ただ、予算についての関心の高さ、また、他の不正行為が部門間の費用の付替である点を考えると、予算順守という点に非常に強いプレッシャーを感じている従業員が多かったのではないかと思われる。

対応として、内部通報制度を取引先にも拡大することなどが考えられるが、ビジネス上の関係を継続する誘因のほうがおそらく強いため実効性は期待できない。
以上踏まえると、業務上の効率を犠牲にするとしても、社内でのローテーション人事が有効な対策になるのではないかと思われる。

  1. 有価証券報告書 第84期 参照 ↩︎
  2. 公表資料 2024年3月14日付 ,2024年4月19日付 を参照 ↩︎
  3. Yahoo Finance!から情報を取得し、筆者作図 ↩︎

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